昨年度までの細胞株(Syrian hamster embryo fibroblast)を用いた検討をふまえて、本年度よりヒトの癌細胞および腫瘍様の増殖を示すことが知られる関節リウマチ(RA)患者由来の滑膜細胞を用いた臨床的研究に移行した。 1)ヒト腫瘍細胞におけるGab1の発現の検討 Syrian hamster embryo fibrnblastを用いたin vitro transformationの系で、N末端から103個のアミノ酸を欠失した異常Gab1(Gab1^<Δ1-103>)の発現と、その後のGab1の発現消失という2段階のGab1発現変化が見られたことから、ヒト腫瘍細胞由来の細胞株におけるGab1の発現を検討した。一部のT細胞由来腫瘍細胞株においてGab1の発現消失が認められた。 2)関節リウマチ患者より採取した滑膜線維芽細胞におけるアダプター蛋白の発現 関節リウマチの病態において滑膜細胞がtransformした性質を示すことが明らかになりつつあるため、滑膜細胞においてアダプター蛋白の発現異常や機能異常が生じている可能性を検討した。RA患者滑膜細胞で血小板由来増殖因子(PDGF)受容体の発現亢進がみられ、PDGFは滑膜細胞の増殖に最も重要な因子と考えられているため、多くの細胞でPDGF受容体のシグナル伝達に関与することが知られるGab1、Gab2、Schの発現をRA患者滑膜細胞において検討した。これらアダプター蛋白の発現とPDGF刺激による速やかなチロシンリン酸化が確認された。
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