研究概要 |
担癌患者ではすでにCTLは癌隔絶抗原に対してトレランスが成立している事が多い。一方、生体は癌抗原に対する抗体を産生し続ける。これはCD4陽性T細胞の抗原認識機構は保たれていることを示している。しかし、Th1あるいはTh2タイプのどちらの反応も保たれているかどうかはいままで解析されていなかった。 今回,HLA-DR分子に結合するアミノ酸配列をヒトパピローマウイルス(以下HPV)から探索し,その合成ポリペプチドを用いて,患者T細胞の反応性を解析した。 同意を得て検査したHPV16DNA陽性の子宮癌患者のHLA-DRB1*0901の頻度は統計学的な有意差をもって増加していた。HPV16の癌遺伝子として知られているE6/E7を強制発現させた細胞由来のリコンビナント蛋白に対して,患者の半数が抗体を持っていた。E7をコードする合成ペプチドシリーズを作成し,HLA-DRB1*0901分子との結合性を調べたところ,E7C末側の20-40アミノ酸との結合性が最も高かった。このペプチドを認識する患者T細胞が産生するサイトカインを解析したところ,癌患者ではTh2タイプのT細胞の反応は残っていたもののTh1タイプのT細胞の反応は低下していた。 これらの結果から,抗原であるHPVに対するTh1タイプT細胞の関与に差があり、これはCD8陽性CTLのトレランスと同様に子宮病変のがんへの進行に影響しているものと考えられた。
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