研究概要 |
I.卵白アルブミン認識T細胞レセプター遺伝子導入トランスジェニックマウス(TCR-Tg)をバックグランドとしたGATA-3遺伝子導入ダブルトランスジェニックマウス(GATA-3/TCR-Tg)が気管支喘息モデル動物として有用であるかを免疫学的及び病理学的観点から検討し、これまでにGATA-3遺伝子が導入されないマウス(WT/TCR-Tg)に比して(1)気管支洗浄液中のTh2型サイトカインIL-4,IL-5及びIL-13のサイトカインの上昇と好酸球の浸潤が認められ、GATA-3/TCR-Tgマウスに於いては、IL-5とIL-13産生及び好酸球数に有意差が認められた。(2)また、病理組織学的に気管支周囲へのリンパ球及び好酸球の強い浸潤、気管支基底膜の肥厚及び気管支上皮の粘液産生の亢進がGATA-3/TCR-Tgマウスに著明に認められた。(3)本年度の研究計画のアセチルコリンに対する気道過敏性について検討したところ、GATA-3/TCR-Tgマウスに於いて約3倍、WT/TCR-Tgマウスに比して過敏性が高まっていることが明らかになった。 II.OVAペプチドの点鼻を用いた気管支喘息モデルの誘導を試みたが、現在までに両マウス群に於いて明らかな病態を形成するには至らなかった。血清中のOVA特異的IgE抗体量は十分に上昇をしているにも関わらず、チャレンジに用いるペプチドの量が適切でないために誘導できないことが考えられた。これらのことから、OVA免疫/OVA点鼻による誘導を試み、有効なペプチドの量を推定する。 III.これら実験と同時にOVA非免疫/OVA点鼻のみによる気管支喘息モデルの誘導を試み、OVA(20mg/マウス)毎日点鼻投与で一週間後に著明な喘息様症状認めるに至った。気道過敏性、粘液産生及びサイトカインに付いてもGATA-3/TCR-Tgで有意に高まっていた。サイトカインについては、これまでの誘導系の結果とは異なりIL-4をも高まっていることが示された(定量的PCR法にて)。しかし、これまで誘導系によっての結果に比して反応は弱い。これらの事実から、GATA-3転写因子の要求性が生体内での免疫バランスによって異なっている可能性が示唆された。
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