平成14年度までの研究で、抗PCNAマウスモノクロナール抗体を用いて精製したPCNA-蛋白複合体にはDNAの複製に関与する"DNAフォーク"、細胞周期の制御に関与するPCNA-p21-cyclin-CDK結合体、さらにプロテアソーム-PCNA複合体が存在することを明らかにした。また、自験全身性性エリテマトーデス(SLE)患者血清の蛋白複合体に対する免疫応答について解析を加え、33%の患者血清がPCNA蛋白複合体中の少なくとも一つの蛋白と反応し、大部分の血清が複数の蛋白と同時に反応すること確認した。また、同一患者の血清の反応性を経時的に観察すると、病態の活動性と相関してPCNA複合体の各成分に対する免疫応答が広がっていく現象が認められた。これに引き続き、平成15年度は、2D-ゲル電気泳動およびion-pair chromatographyにてプロテアソーム-PCNA複合体の構成成分の解析を行い、分子量37-kDa、等電点8.5の蛋白がglycealdehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)であり、SLE患者自己抗体の認識する新たな自己抗原あることを明らかにした。細菌などの感染症で、GAPDHに対する抗体産生が誘導されことが知られており、溶血連鎖球菌感染症後の腎炎の病態形成への関与も示唆されていることから、PCNA複合体に対する免疫応答の誘導とループス腎炎における本抗原の関連性を示唆する興味深い結果と思われた。また、プロテアソーム-PCNA複合体の構成成分であるPA28γ(Ki)と同じくプロテアソームの活性化因子であるPA28αに対する自己抗体のSLEとシェーグレン症候群に対する疾患特異性と、両抗体の相関を明らかにし、これら一連の蛋白に対する免疫応答を誘導する上での抗原提示の重要性を見いだした。
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