研究概要 |
インスリン自己免疫症候群と1型糖尿病はともにインスリン自己抗体を病因とする2大疾患である。また外来性ヒトインスリン注射によるインスリン抗体は動物インスリン注射歴のないヒトインスリン注射中糖尿病患者血中に存在し、血中インスリンを捕獲するが、いまのところ細胞毒性は知られていない。前者は病因的抗体である。 1.インスリン自己免疫症候群患者の統計はこれまで東京女子医科大学糖尿病センターでおこなわれている。1970-1997年まではすでに報告した(Ann Med Interne 150 : 245, 1999)ように244名であった(平均9名/年)。1998-1999年の報告は11症例であったが、1999-2003年に24症例(平均7症例/年)の報告ないし個人的な情報を得た。1970年に発見された最初の症例から数え、2003年末までに279症例となる(平均8.5症例/年)。本症候群の発症頻度の増加はいまのところ見られない。しかしながら、依然として発症していることがわかる。頻度の減少はない。2.外来性ヒトインスリン製剤に対するインスリン抗体のスキャチャード解析をインスリン自己免疫症候群のインスリン自己抗体のそれと比較した。昨年までの28症例に加え、本年度は4症例を入手できたが、これまでの実験結果から得ている本症候群の特徴(インスリン自己抗体のk1(10^8L/mol)は1未満、b1(10^<-8>mol/L)は10以上)は踏襲できていた。これは外来性インスリンのそれとは明確に異なる(k1は1以上、b1は1以下)。3.上記のK1とb1の相違はインスリン自己抗体の抗原エピトープの相違により産生機構の違いを表していると考えられる。4.1型糖尿病のインスリン自己抗体は微量なため、今回測定系にのらなかった。
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