肝内胆管細胞のheterogeneityが免疫学的胆管炎にいかに関与するか?

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670488
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 上野 義之 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (70282126)
• キーワード: 胆管上皮細胞 / cDNAマイクロアレイ / 網羅的検討 / トランスフェクション / 不死化 / heterogeneity

研究概要

免疫学的機序による胆管炎には,原発性胆汁性肝硬変,肝移植の際に起こる慢性拒絶反応,及び骨髄移植後の宿主体移植片病などがあり,いずれも進行性で終末的には肝不全を呈する疾患である。免疫学的機序が想定されているものの,そのメカニズムは解明されておらず,特に肝移植後の慢性拒絶反応は,肝移植の再移植必要例の原因の大半を占め,我が国に移植医療が定着するために,早急に解決されるべき問題である。この点を背景に、「なぜ小葉間胆管という特定の胆管上皮細胞に免疫学的障害が発生するか?」という疑問に答えるため、「アポトーシス関連装置の発現レベルが胆管細胞のheterogeneityにより規定される」という仮説をたて、IBDECのそのheterogeneityに拠ったサブグループに分離・培養することによりその細胞生物学的特性を明かにすることを目標とし、引いてはヒト免疫学的胆管炎の発症機序を明らかにしようとするものである。平成13・14・15の3年間の研究により、cDNAμアレイ法という新しい包括網羅的研究手法を用いて、大型・小型胆管細胞に発現される遺伝子の相違を明らかにすること目的とした。とりわけ、平成15年度はcDNAμアレイ法を用いて、大・小胆管細胞でおいての遺伝子発現の相違を網羅的に明らかにし、そうのうち重要と思われるものを蛋白レベルで検討をした。これにより、大型胆管はより分化した機能的遺伝子を発現していることが明らかになり、小型胆管は増殖などに関与する遺伝子を発現したことがわかった。本研究は、再現性に富みかつ将来の臨床応用にも貢献し得る基盤研究であると考える。

研究成果

• [文献書誌] Ueno Y, Alpini G, Yahagi K, Kanno N, Moritoki Y, Fukushima K, Glaser S, LeSage G, Shimosegawa T: "Evaluation of differential gene expression by microarray analysis in small and large cholangiocytes isolated from normal mice"Liver International. 23. 449-459 (2003)
• [文献書誌] Kida M, Mano Y, Ueno Y, Kobayashi K, Goto J, Ishii M, Shimosegawa T.: "Vectorial transport of bile acids in immortalized mouse bile duct cells"Hepatol Res. 27. 151-157 (2003)
• [文献書誌] Alpini G, Ueno Y, Tadlock L, Glaser SS, LeSage G, Francis H, Taffetani S, Marzioni M, Alvaro D, Patel T.: "Increased susceptibility of cholangiocytes to tumor necrosis factor-{alpha} cytotoxicity after bile duct ligation"Am J Physiol Cell Physiol. 285. C183-C194 (2003)
• [文献書誌] Glaser S, Alvaro D, Ueno Y, Francis H, Marzioni M, Phinizy JL, Baumann B, Mancino MG, Venter J, LeSage G, Alpini G.: "Gastrin reverses established cholangiocyte proliferation and enhanced secretin-stimulated ductal secretion of BDL rats by activation of apoptosis through increased expression of Ca2+-dependent PKC isoforms"Liver Int. 23. 78-88 (2003)