研究概要 |
6種類の肝癌培養細胞(HLE,HuH7,HepG2,PLC/PRF/5,Hep3B,HuH6)を脱メチル化剤である5-Aza-2-deoxycytidine(Aza-C)にて処理した後、抽出したtotal RNAからpoly(A)RNAを精製し、逆転写酵素によりCy3-dUTPで標識しプローブとした。同様に、Aza-C未処理の培養細胞から得られたpoly(A)RNAはCy5-dUTPで標識した。これらを混合し、癌に関連する既知の遺伝子557種類がスポットされたcDNAマイクロアレイ上でハイブリダイゼーションを行い、Aza-C処理により発現が上昇する遺伝子を解析した。上記6種類の各培養細胞においてAza-C処理により5倍以上発現が増加していた遺伝子は、それぞれ11、14、9、7、11、19種類であった。これら遺伝子の中で複数の培養細胞株で5倍以上発現が増加していた遺伝子は13個であった。この中には肝癌での異常メチル化が報告されているE-cadherinが含まれていた。その他にも、HGF-activator inhibitor type2(HAI2),IGFBP3などの肝細胞増殖と関連する遺伝子が認められた。このうち、HAI2のプロモーター領域のCpG islandをsodium bisulfite DNA sequencing法にて解析したところ、各細胞におけるメチル化の頻度はマイクロアレイの結果と良く相関していた。メチル化酵素阻害剤とcDNAマイクロアレイを組み合わせることにより、異常メチル化により転写が抑制されている遺伝子の網羅的解析が可能であると考えられた。脱メチル化剤により発現が増加していた他の遺伝子についても、プロモーター領域のメチル化の頻度を検討するとともに、細胞増殖、形態変化に及ぼす影響を検討する予定である。
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