本研究は、胃癌の発育進展においてギャップ結合を介する細胞間コミュニケーションがどのように作用しているかを検討するものである。私は以前より、ヒト胃癌及び動物実験で作成された胃癌では細胞間コミュニケーションを司るギャップ結合及びそれによって生ずる細胞間コミュニケーションが低下することを報告している。更に、細胞内に癌遺伝子をtransfectすると細胞間コミュニケーションが低下することも報告されている。これらの結果をふまえると、果たして、ギャップ結合を介する細胞間コミュニケーションが第一義的に作用しているかどうかが問題となる。その為にまず、培養胃癌細胞株を用いてギャップ結合についての検討を行なった。今回、コントロールとしてウサギ胎児へ培養胃粘膜細胞を用いて検討したが、培養胃粘膜細胞ではコネキシン43を発現し、細胞間コミュニケーション能も十分に存在した。しかし、胃癌細胞株であるMKN28は細胞間接着装置があることが電顕、蛍光抗体法で確認されたがlucifer yellowを用いたmicroinjection dye transferの結果、培養胃粘膜細胞と異なり細胞間コミュニケーション能は低かったが、他のKATO III、MKN45の細胞株では更に減少していた。現在、これらの細胞を用いてHUVEC、3T3細胞等の他の細胞と胃癌細胞株を混合培養し、そのギャップ結合の変化及び増殖について検討している所である。
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