研究概要 |
アンギオスタチン(AGS)受容体がATPsynthaseであるとの報告が最近なされた。また、細胞接着蛋白であるカドヘリンの研究において、易転移性の腫瘍ほど、E-カドヘリンよりN-カドヘリンへとその発現の変化が認められている。その病態として、腫瘍のFGF刺激によるメタロプロテネース(MMP)産生の増大が示唆された。まず、人肝細胞癌組織であるHepG2細胞を用いてN-cadherin, E-cadherin, ATPsynthaseに対する抗体による免疫染色をおこなった。その結果このうち,E-CadherinとATPsynthase(AGS受容体)でその細胞膜が染色陽性であったため、HepG2細胞を用いて実験をおこなうことにした。FGF刺激によるMMP活性の増加が、AGS添加により抑制されるか検討をおこないデータを解析中である。またこの活性の増加にともなってN-cadherinの細胞膜上への表出と、E-cadherinの染色性の減少が起きるかを免疫染色により検討している。その後に、AGSの添加によりN-cadherinの細胞膜上への表出(即ち転移能の増大形質発現)が抑制されるかどうかを試みる。また、マトリックスゲルへのHepG2細胞の浸潤のアッセイの条件決めをおこない、この浸潤がAGSにより阻害できるかを調べている。これらのデータの集積により、FGFにより腫瘍細胞がMMP活性を増してN-cadherinを表出した転移性形質を獲得することを、AGSで阻害できるか、が判明する。 既に作成されているAGS発現ベクターを用いて、Kringle部分を中心としたdeletion mutantの作成も試みている。
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