研究概要 |
NS5A蛋白によるapoptosis抑制機構の解析:NS5A蛋白発現細胞においては、TNFによるapoptosisが減弱していた。その作用点は、caspase3,8,9の直接の抑制か、これらのcaspase cascadeの最上流にあるcaspase8ないしはそれより上流の抑制にあると考えられた。そこでcaspase8を強制発現させたapoptosis誘導系におけるNS5Aの作用を検討したところ、NS5Aはcaspase8のapoptosis誘導活性そのものは抑制しえないとの結果が得られ、従ってNS5Aの作用点はCaspase8より上流であると考えられた。NS5A蛋白はTRADから分岐するNFkBの系は抑えないことより、作用点はTRADDより下流のFADD、FLASH等のDISC、すなわちdeath inducing signaling complexに有るのではないかと推測される。 HCV増殖機構に対するNS5A蛋白の作用の解析:我々は、インターフェロン誘導遺伝子の転写制御エレメントinterferon stimulated response element(ISRE)の下流にluciferase遺伝子を組み込んだreporterを用いて、NS5A蛋白が細胞内インターフェロンシグナル伝達を抑制することを示してきた。一方、新たに独自に構築したHCVReplicon発現定量システムは、インターフェロン投与に対してきわめて鋭敏に反応し、その増殖状態はluciferase assayによりdynamicに定量できるために、自然に近いHCV増殖、HCV蛋白発現状態下における細胞内インターフェロンシグナル伝達系を、Replicon増殖そのものをreporterとして定量的に評価可能である。この系を用いて我々が今まで観察してきたNS5A蛋白によるインターフェロンシグナル伝達抑制作用を検証した。すなわちNS5Aをadenovirus vectorをもちいてtransに遺伝子導入することにより、NS5A変異がシグナル伝達に及ぼす影響を検討した。その結果、wild type NS5Aをtransに導入することにより、Repliconのインターフェロンにたいする感受性が減弱し、NS5Aがインターフェロンの抗ウイルス作用に対して拮抗することが示された。
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