研究概要 |
膵癌はいまだ極めて予後不良であり、とくに有効な治療手段のないその進行癌は、まったく新しい治療手段であり今後の発展が切望される遺伝子治療のよい対象とされる。本研究では、これまでに開発した腫瘍指向性ペプチドベクターCRGDCF (K [H-]KKK)6と複合体を形成させるものとして、最近注目されるRNA interference (RNAi)を利用した治療導入遺伝子の基礎的検討を行い、進行膵癌に対する非ウイルス性遺伝子治療の開発を目指す。 一般的に哺乳動物細胞では、長い二重鎖RNAに対するインターフェロン経路が発達しており、RNAi経路がマスクされているとされている。人癌細胞においては、長い二重鎖RNAでもRNAi効果が観察しうることをこれまでに示したが(Clin Exp Pharmacol Physiol30:96,2003)、発現アンチセンスRNAの2倍程度の効果であった。一方、インターフェロン経路を回避するとされる21塩基対(3'端に対称的に2塩基のオーバーハングを有する)の短い二重鎖RNA (siRNA)も、オリゴフェクタミンを導入ベクターとして白血病細胞を用いた検討で有効にRNAi効果を発揮することが観察された(Cancer Gene Ther 10:125,2003)。効率はオリゴフェクタミンよりも劣るが、腫瘍指向性ペプチドベクターも、アンチセンスオリゴ核酸とともにsiRNAの担体として機能することが示された(Clin Exp Pharmacol Physiol 30:96,2003)。腫瘍指向性ペプチドベクターとsiRNAの場合、モル比1:1の静電気的結合による複合体を想定しているが、これを出発点としてさらに発展させて行きたいと計画している。
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