本年度は、新しい簡易DNAサブトラクション法の条件設定を行った。最初に、単一プライマーPCR増幅法に用いるプライマーを、testerおよびdriver用の2種類を選定した。コンピューター上でランダムな配列を作成し、PCRプライマー設定用のプログラムを用いて、融解温度が同一で、相互に、また相補的な配列についても交差反応しない2種類のプライマー配列を抽出した。さらに、gene bank上で、既知の遺伝子配列にそのプライマー配列が存在しないことを確認した。次に、既知のウイルスの配列から、普遍的に存在し、かつ断片の長さがPCRにて検出しやすい100〜800merになる制限酵素部位を検索した。先に設定したプライマー配列にこの制限酵素の断端を含むoligomerを加え合成し、相補的なoligomerと組み合わせてadopterを作成した。市販のラムダDNAをコントロールとして用い、制限酵素にて切断し、アダプターをライゲーション後、driverプライマーにて増幅し、予想通りの生成物が得られるようにPCRの条件を設定した。また、HCVのコア領域を組み込んだプラスミドをターゲットとして、ラムダDNAと濃度を変えて混合し、両者のDNA濃度差が縮まるように特殊なPCR条件を設定した。これにより1000倍の濃度差を縮める条件を設定可能であった。サブトラクションの確認では、ラムダDNAとHCVの遺伝子を組み込んだプラスミドの混合物を作成し、これをtesterプライマーにてPCR増幅した(特殊PCR条件)。一方、ラムダDNAを単独で、ビオチン化したdriverプライマーにてPCR増幅した。両者を1:100の割合で混合し、マグネティックビーズを用いてサブトラクションを行い、得られた検体をPCR増幅したところ目的としたHCVの増幅産物が得られた。
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