研究概要 |
1 簡易サブトラクション法の条件設定 H15年度はH14年度に引き続き、既知のDNAを混入したコントロール血清から目的とするDNAを効率よく検出する条件設定を行った。今回は、目的とするDNA量を多くすることにより条件を緩和し、問題の洗い出しを行った。目的とするDNAが増幅されない原因として、バックグラウンドが高くなることが原因の一つと考えられた。このバックグラウンドを解析すると、アダプターの重合した配列が多く検出され。これを基に、サブトラクションの条件設定を、特にアダプターの設定を中心に再検討した。アダプターの配列を見直し、できるだけ重合しにくい設計とした。この結果、バックグラウンドの低下がみられた。しかし、今後さらに条件を検討する必要がある。 2 原因不明のウイルス肝炎症例の評価 非B非C型慢性肝炎症例における非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の関与を検討し、原因不明の肝障害における代謝性因子の重みを検討した。対象は、臨床的に原因不明の慢性肝炎型肝障害と診断され、組織学的な検討が行われた41例である。また、US上明らかな脂肪肝のある症例は除外した。NASHの病理学的検討には、大滴性脂肪沈着、肝細胞の膨化変性やマロリー小体の存在、炎症性細胞浸潤、肝細胞の核内空胞、肝細胞周囲の線維化の有無を基準とした。 対象とした41例中13例(32%)は組織学的にNASHと診断された。NASHと非NASHの比較では、NASH群でHOMAインデックス、血中フェリチン値が有意に高い傾向がみられたが、一般的な肝機能検査に差はなかった。以上より、(1)原因不明の慢性肝炎型肝障害の中に脂肪化の軽微なNASHが混在している可能性があり,その頻度は決して低くない、(2)インスリン抵抗性や高フェリチン血症の存在は,原因不明の慢性肝炎からNASHを拾い上げる際に有用な指標である。
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