本研究では、非A-E型肝炎ウイルスのクローニングを目的とした新しい方法論の開発と原因不明のウイルス肝炎症例の評価を行った。 未知のウイルス発見を目的とした効率の良いクローニング法、すなわち、簡易DNA断片均一化および簡易サブトラクション法の開発を行った。今回開発を試みた「簡易DNA断片均一化および簡易サブトラクション法」は未知のウイルス発見を目的とした効率の良いクローニング法である。本邦の特徴であるDNA断片均一化はクローニングに有用であることが基礎実験の段階で示された。しかし、血清検体を用いるとバックグラウンドが高くなることが問題となった。この原因として、アダプターの重合が挙げられた。今後、この点を解決し、本クローニングシステムを完成させる必要がある。 非A-E型肝炎は臨床的な概念であり、確固とした診断基準はない。基本的には除外診断により診断されており、新しい原因の候補が報告された場合はこれについての検討が必要である。これまで、急性および慢性の非A-E型肝炎と診断された症例をベースとして本研究は計画されている。そこで、今回は、新しく注目されたSENウイルス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)について、非A-E型肝炎での役割を検討した。また、日本国内に内在することが明らかとなったE型肝炎についても一部検討した。非A-E型肝炎において、SENウイルスは関連なく、E型肝炎ウイルスの関与は低いと考えられた。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)については、非B非C型慢性肝炎と診断される症例に少なからず関与していた。このNASHの拾い上げには、インスリン抵抗性や高フェリチン血症の存在が指標となると考えられた。
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