1:E型肝炎ウイルス(HEV)のcapsid蛋白のcDNAをbaculovirusに組み込み、昆虫細胞で発現させると核酸を含まないウイルス様粒子(virus-like particle : VLP)が形成される。このVLPをEGTAで処理すると粒子構造が壊されるが、そのときにプラスミドベクターと過飽和のカルシウムを添加することでプラスミドベクターが封入されたVLPを作製した。 2:GFPの発現ベクターをVLPに封入し、培養細胞への遺伝子導入を試みたところ、肝癌細胞を含む各種癌細胞への遺伝子導入が確認された。 3:HEVは元々肝細胞への感染性があるため、VLPによる肝細胞への遺伝子導入が可能であると考え、GFPの発現ベクターを封入したVLPをマウスに静脈内投与したところ肝細胞への遺伝子導入が確認された。 4:HEVは経口感染ウイルスであるため、経口投与による腸管への遺伝子導入も可能であると考え経口投与したところ、マウス小腸に遺伝子導入が確認された。 5:治療モデルを作製するため、ビリルビンなどのトランスポーターであるMRP2のcDNAをクローニングし、発現ベクターの作製をおこなった。 6:黄疸の病態モデルをとして、C型肝炎ウイルスの構造蛋白を組み込んだrecombinantアデノウイルスベクターをマウスに静脈内投与し、黄疸を来す急性肝炎モデルを作製した。 今後急性肝炎モデルにMRP2の発現ベクターを封入したVLPを用いて肝特異的にMRP2を過剰発現させ、遺伝子導入による治療効果を検討する予定である。
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