研究概要 |
水チャネルアクアポリン(AQP)は腎や消化管など水出納が激しい組織で多く発現しており、これまでAQP0〜AQP10までのサブタイプが発見されている。我々は、ラットを用い小腸大量切除後のadaptationについて研究を進める中で、小腸切除後に残存小腸と大腸粘膜においてAQP3が一過性に著しく増加することを明らかにした(J Gastroenterol hepatol in press)。この結果を踏まえ、AQP3に注目し消化管ホルモンによる調節機構について腸上皮細胞株を用い検討した。HT-29細胞に消化管ホルモンのVIP、PYY、NPYを添加してAQP3発現を検討したところ、VIP添加によりAQP3mRNAは添加6時間をピークに100pM以上で発現が増加した。次にcAMP阻害剤を用いてAQP3発現増強の刺激がcAMP依存性転写因子CREBを介していることを明らかにした(J Gastroenterol Hepatol 18:203-210,2003)。また、ラフィノースやマンニトールを用いた高浸透圧刺激によっても腸上皮細胞のAQP3は増加すること、さらに神経体液性因子の一つであるNa抗利尿ペプチド(ANP, BNP)によっても調節を受けることが明らかにされ、下痢などの消化器疾患だけでなく、全身の体液調節因子によっても消化管の水分出納は調節されている可能性が示唆される結果が得られつつある。今後、下痢型過敏性腸症候群におけるAQPの役割、心不全や肝硬変など全身の水貯留をきたす疾患との関連について研究を進めている。
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