研究概要 |
ヒト膵腺房由来線維芽様細胞(Pancreatic Myofibroblast,hPFC)はヒト膵組織より再現性,安定性をもって単離継代培養が可能であった.hPFCにおけるMatrix metalloproteinases(MMPs)の産生についてはGelatin gel zymographyにより活性型MMP-1,2,9が分泌されていることが確認できた.MMPの中でもcollagenase活性をもつ,MMP-1についてhPFCからの分泌を検討したところ,MMP-1はpro-inflammatory cytokineであるIL-1βやTNF-α刺激で時間・用量依存性に分泌亢進が認められた.これら,IL-1βやTNF-αによるMMP-1分泌においてPKC inhibitor(Bisindolylmaleimide,Calphostin C),MAPK inhibitor(Apigenin,PD98059,SB203580),PI-3K inhibitor(Wortmannin)の効果を検討したところ,PKC inhibitorではIL-1β,TNF-α刺激により惹起されるMMP-1分泌は抑制されなかった.一方,MAPK inhibitorでは,ApigeninとPD98059による抑制が認められたが,p38 MAPK inhibitorであるSB203580では分泌抑制は認められなかった.また,PI-3K inhibitorによる検討では,約50%の分泌抑制が認められた.MMP-1 cDNA probeを作成し,IL-1β,TNF-α刺激によるMMP-1 mRNA発現について検討行ったが,Apigenin,PD98059により発現抑制が認められた.PI-3K inhibitorでの検討では,mRNA発現の抑制は認められていない.現時点までの結果より,hPFCにおけるMMP-1分泌には,PKC dependentな経路の関与はなく,MAPKとPI-3Kのシグナル伝達経路が関与しており,MAPKの経路ではMAPK/ERK1,2のいわゆる古典的経路が主経路であり,transcriptional regulationが関与していること,PI-3Kでは,post transcriptional regulationまたは,translational modulationの関与が示唆されている.
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