研究概要 |
1 目的:近年、IGTに対するα-グルコシダーゼ阻害剤を用いた介入試験において、糖尿病への移行を有意に抑制するとの報告があり、このことからα-グルコシダーゼが糖尿病の発症、および進展に関与していることが示唆される。そこで、我々はα-グルコシダーゼの一つであるスクラーゼ・イソマルターゼ(SI)遺伝子の発現調節に重要な働きをするHNF-1とSIの発現、活性の関連をヒト結腸癌由来のCaco2細胞を用いて検討した。 2 方法:(1)SI上流-1244bp部位からエクソン1の+46bp部位を含むルシフェラーゼ発現プラスミドを作成した。HNF-1aおよびHNF-1bの翻訳領域全長をpCMV6bベクターに組み込んだ発現プラスミドを作成した。インターナルコントロールのP-act-beta-galおよび、上記の各1ugを同時にCaco-2細胞にリポフェクション法を用いて、ルシフェラーゼアッセイおよび、ベータギャルアッセイを行いSI遺伝子転写活性を測定した。 (2)コンフルエント後14日のCaco-2細胞を、異なったグルコース濃度(10,100,400mg/dl)で培養し、膜タンパク分画および、total RNAを調整した。これより、SIの消化活性およびリアルタイムPCRを用いてSI、HNF-1aおよびHNF-1b mRNA発現を定量した。 3 結果:(1)HNF-1aおよびHNF-1bは各々、SI遺伝子転写活性を約10倍、4倍に増加させた。 (2)SI消化活性は、低グルコース(10mg/dl)培養時に100、400mg/dlと比較し、約2倍に有意に増加した。このとき、SIおよびHNF-1b mRNAは有意な変化を示さなかった。 4 考察:HNF-1aおよびHNF-1bは、ともにα-グルコシダーゼのひとつであるSI遺伝子の発現を増加させた。また、Caco-2細胞では、グルコース濃度に依存的にSIの消化活性が調節されており、HNF-1aのグルコース依存性の発現寮の変化がSI遺伝子発現を調節し、その結果として消化活性を調節している可能性が示された。
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