研究課題/領域番号 |
13670514
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻井 正彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40303937)
|
研究分担者 |
川野 淳 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60133138)
辻 晋吾 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40301262)
|
研究期間 (年度) |
2001 – 2002
|
キーワード | cyclooxygenase / 大腸癌 / 肝転移 / sialyl Lewis抗体 / 糖転移酵素 |
研究概要 |
外科的技術の向上から大腸癌の原発巣は殆どの症例において治療可能であり、肝転移が予後決定因子のひとつとなっている。多変量解析により、肝転移のリスクファクターとして、腫瘍のステージ、腫瘍組織内での脈管侵襲、cyclooxygenase-2(COX-2)発現の3つの因子が挙げられている。COX-2は非ステロイド系消炎鎮痛剤NSAIDsの標的分子のひとつであるが、NSAIDsの長期常用者では大腸癌による死亡率が有意に低いことが明かにされている。本検討では、COX-2活性の大腸癌腫瘍細胞の血行性転移能におよぼす影響について検討した。ヒト大腸癌由来培養細胞株でCOX-2発現の低いCaco-2細胞にはCOX-2を強制発現させ、COX-2高発現株のHT29にはCOX-2阻害剤を作用させることにより、COX-2活性を制御した。in vivoでヌードマウスの脾臓注入モデルにおける肝転移能、in vitroで腫瘍細胞と血管内皮細胞との結合能、腫瘍細胞上に発現し血管内皮細胞との結合に重要な糖鎖抗原sialyl Lewis A抗原の発現について検討した。脾注モデルにおいて肝転移巣を形成しなかったCaco-2細胞は、COX-2を強制発現により肝転移巣を形成するようになった。HT29細胞は肝転移巣を形成するが、COX-2阻害剤処理により肝転移能は有意に抑制された。また、抗Span-1抗体、抗sialyl Lewis A抗体は各々COX-2発現Caco-2細胞、HT29細胞の肝転移能を抑制した。in vitroの検討では、COX-2発現と腫瘍細胞と血管内皮細胞との結合能、sialyl Lewis抗原発現、及びその合成に必要な糖転移酵素の発現の間に正の相関がみられた。COX-2阻害剤によりCOX-2発現に伴う腫瘍細胞-血管内皮細胞問結合、sialyl Lewis発現、糖転移酵素発現は抑制されたが、PGE2添加によりrestoreされた。以上より、腫瘍組織におけるCOX-2発現はPGE2を介し、腫瘍細胞と血管内皮細胞との結合に関わる糖鎮抗原の発現を誘導し、腫瘍の血行性転移能を亢進させる可能性が示唆された。
|