研究概要 |
胃体部皺臓の著明な腫大を認める巨大皺壁性胃炎は胃癌発生の高危険群であり、H.Pylpri感染、著明な炎症細胞浸潤、Interleukin-1βの産生増加、高ガストリン血症を伴う。今回、われわれはガストリン受容体遺伝子をヒト胃癌細胞株MKN28に導入して得られた細胞株を用いて、以下の点を明らかにした。 1.ガストリンは胃上皮細胞のIL-8産生を著明に誘導し、この効果はIL-1beta、TNF-alphaおよびH.pylori菌体成分と協調的であった。2.ガストリンのこの作用は転写因子NF-kappaBとAP-1の活性化を介しており、特にNF-KappaB活性化が必須である。3,ガストリンによるNF-kappaB活性化はprotein kinase C(PKC)の活性化を介しており、アイソフォームとしてはPKC deltaが最も重要である。4.NF-kappaBの上流の分子としては、IKK, NIK, TRAF6の関与が示唆されたが、TRAF2の関与はないと考えられられた。以上よりガストリンはNF-kappaBを活性化し、炎症に強く関与していることが明かとなった。したがって,H.pylori 胃炎においてガストリンは炎症の憎悪因子、胃癌発生のプロモーターであると考えられる。NF-kappaBは炎症ばかりでなく細胞の分化、増殖、アポートシスにも強く関与している。今後、NF-kappaBの持続活性化モデルを用いて、NF-kappaBが胃上皮細胞の分化、増殖、アポトーシスに及ぼす影響を明らかにしていく予定である。
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