研究概要 |
胃体部皺襞の著名な腫大を認める巨大皺襞性胃炎は胃癌発生の高危険群であり、H.pylori感染、著名な炎症細胞浸潤、Interleukin-1 βの産生増加、高ガストリン血症を伴う。われわれはガストリンに胃上皮細胞のケモカイン誘導作用のあることを見いだし、ガストリンが胃炎の増悪因子であるとの仮説を立てて研究を進めてきた。今回、われわれはガストリン受容体遺伝子をヒト胃癌細胞株MKN28に導入して得られた細胞株およびモルモット単離胃壁細胞を用いて、以下の点を明らかにした。1.ガストリンは胃上皮細胞のNF-kappaBを活性化し、この効果はprotein kinase C(PKC)阻害剤により阻害される。2.ガストリンによるNF-kappaB活性化はIKK, NIK, TRAF6のdominant negative cDNA導入により阻害される。3.ガストリンによるNF-kappaB活性化はPKC delta阻害剤またはdominant negative PKC deltaの遺伝子導入により阻害される。4.ガストリンは胃上皮細胞においてPKC deltaを5分以内に活性化し、この効果は60分以上続く。5.胃上皮細胞へのPKC delta cDNAの導入はNF-kappaBを活性化し、この効果はIKK, NIK, TRAF6のdominant negative cDNA導入により阻害される。以上よりガストリンはPKC deltaの活性化を介してサイトカインシグナルと同様の経路を経てNF-kappaBを活性化することが明らかとなった。したがって、H.pylori胃炎においてガストリンは炎症の増悪因子、胃癌発生のプロモーターであることが示唆される。
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