これまで肝細胞癌ではTGF-βに対する反応性が低下しており、そのことが自律的細胞増殖の一因である事を示して来た。そして、TGF-βに対する反応性が保たれている細胞株ではSrc蛋白がTGF-βにより減少する事から、TGF-βにより誘導されるSrc分解酵素が存在する可能性が考えられ、TGF-βによる細胞増殖調節機構において重要な役割を果たしている可能性がある。本研究の目的は、このSrc分解酵素を同定することである。当初、Src分解酵素活性測定系の確立を目指しそれなりの活性が得られたが、その後測定系の再現性が乏しく、現在の処、充分に安定した結果を得られていない。今後もSrc分解酵素活性測定系の確立に向けて検討を行なう予定である。 一方、その後の検討で、TGF-βによるSrc分解亢進の主なメカニズムは、むしろTGF-βによりSrc ubiquitinationが亢進し、proteosomeにより分解されるubiquitin-proteosome系が関与することによる可能性が強いことが判明してきた。現在、HepG2細胞を用いてTGF-βによるSrc ubiquitination亢進のメカニズムについても明らかにしつつある。
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