研究概要 |
Helicobacter pylori持続感染と免疫関連遺伝子多型との関連の検討について,平成13年度より本研究を遂行している.H. pylori感染者は幼少時にその感染が成立するが,本研究ではH. pylori感染の危険がほぼ同じであったと考えられる同じ地区に住む検診受診者を対象として,H. pylori感染陽性者と陰性者で遺伝的免疫機構の差異がみられるか否かを検討している.平成14年度には年齢,性をマッチさせた血中抗H. pylori抗体陽性者96名と陰性者96名で,Mannose-binding lectin (MBL)の4つのpolymorphic siteのうちの2領域,IL-10,CD14およびTumor necrosis factor-α(TNF-α)のプロモーターであるTNF(-308)におけるpolymorphismの解析を行なった.現在のところ,H. pylori感染と陰性者の比較では,4つの遺伝子に関して大きな差異を見いだせていない.さらに,免疫機構に関与している他の遺伝子の検討を行なうとともに,各遺伝子変異の組合せによるH. pylori感染成立に及ぼす影響すついての解析を予定している.本研究を行なっていく過程で,長期のH. pylori感染が血中HDL-コレステロールを低下させることを見いだし英文誌のHelicobacterに発表した.また,動脈硬化の進展と関連があるとされている血中ホモシステイン値にH. pylori感染陽性者と陰性者で差異がみられないこと,動脈硬化の進展には加齢が大きく関与しておりH. pylori感染による影響は少ないことを見いだし,それぞれ英文誌のAmerican Journal of Gastroenterology, Journal of Gastroenterology and Hepatologyに投稿し受理され,掲載および印刷中である.
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