研究課題/領域番号 |
13670526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古藤 和浩 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (80289579)
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研究分担者 |
井口 登与志 九州大学, 医学部附属病院, 講師 (00294926)
遠城寺 宗近 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (20253411)
中牟田 誠 九州大学, 医学部附属病院, 助手 (00294918)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 脂肪肝 / 糖代謝 / 脂肪酸代謝 / 肝障害 / オレイン酸 / リノール酸 / インスリン / 遺伝子治療 |
研究概要 |
我々は、上記研究課題のもとに脂肪肝について研究を行ってきた。モデル動物としては、レプチン欠損マウスなどの肥満マウスの使用も当初検討したが、遺伝的に欠損があるマウスを使用した際には、本当の臨床モデルになりうるのかという疑問、また、そのような肥満マウスにおいて欠損している蛋白はいずれも脂質代謝・糖代謝に重大な影響を与える為にその解析が困難になりうる可能性があり、それらマウスを使用しなかった。そこで我々は、絶食後のラットに糖負荷を加えるモデルを用いて脂肪肝を作製し、特に脂肪肝における肝障害(トランスアミナーゼ上昇)のメカニズムを中心に検討した。すなわち、4週齢の雄ラットに72時間絶食させた後、経口的に糖負荷を行い、肝障害を惹起させ、投与24時後に、大豆油・オレイン酸・リノール酸を各々投与する亜群を作成し、糖単独投与群と比較した。糖単独投与では、肝組織に門脈域を中心とした胞体の淡明化があり、トランスアミナーゼの著明な上昇を認めた。しかしながら一方、大豆油を併せて投与すると胞体の淡明化は組織全域に拡大していたものの、トランスアミナーゼの上昇は逆に抑制された。次に、大豆油の主成分であるオレイン酸またはリノール酸を単独で糖と共に投与すると、肝細胞の淡明化は、両者ともに著しく認められたが、リノール酸投与群ではトランスアミナーゼの上昇抑制は全く認められず、オレイン酸投与群では有意にその上昇が抑制された。また、血中のインスリンは、糖単独投与群で上昇しており、大豆油・オレイン酸・リノール酸投与群では、インスリン値の上昇は抑制されていた。以上の結果は、肝障害を伴う脂肪肝の病態に、脂肪酸代謝と糖代謝が密接に関連していることが強く示唆された。また、脂肪肝における肝細胞胞体内の脂肪滴の形態が肝障害に強い関連がある点に興味がもたれた。現在Adipocyte Differentiation Related Protein(ADRP)遺伝子のセンス及びアンチセンスを組み込んだアデノウイルスを使用し、これら脂肪肝モデルに対する影響を検討している。 更に、肝障害のメカニズムを解明するために、in vitroの実験を行った。ラット肝から単離培養したIto cellは、任意のグルコース濃度下においてもviabilityに変化は見られなかった。また、一定時間(48hrs)無グルコースの状態においた後で、任意のグルコース濃度に戻した場合でも同様であった。このことは、高分化肝細胞癌のcell lineであるHepG2でも変わらない。ところが、HepG2をIto cellとco-cultureした場合、Ito cellには、viabilityの変化は見られないが、HepG2はco-cultureすることによってviabilityの低下が認められた。さらに、一定時間無グルコースの状態においた後では、グルコース濃度を上げるほど、HepG2のviabilityは強く障害された。以上の結果は、肝障害に対して肝伊東細胞(肝星細胞)より何らかの液性因子が関与し可能性が示唆された。現在、更に検討中である。
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