研究課題/領域番号 |
13670529
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中田 惠輔 長崎大学, 医学部, 助教授 (40217740)
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研究分担者 |
江島 英理 長崎大学, 医学部・付属病院, 助手 (30231187)
調 漸 長崎大学, 医学部・付属病院, 講師 (40264220)
中尾 一彦 長崎大学, 保健管理センター, 講師 (00264218)
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キーワード | IFN-α / p48 / 肝癌細胞 / PKR / eIF2α |
研究概要 |
p48はIFN-αの細胞内シグナル分子の一つであり、IFN-α刺激によりSTAT1,STAT2と共に転写因子ISGF3を形成する。ISGF3はIFN-α誘導遺伝子のプロモーターに存在するISRE配列に結合し、その遺伝子発現を促進する。近年、IFN-α誘導遺伝子の発現量が、細胞内のp48蛋白量に依存していることが報告された。本研究では、IFN-αの抗腫瘍効果がp48遺伝子導入によって増強されるかを肝癌細胞を用いて検討する。本年度は、IFN-αにより誘導されるdouble-strandcd RNA-dcpendent protein kinase(PKR)の発現や蛋白翻訳阻害活性に与えるp48遺伝子導入の影響を肝癌細胞(HuH-7)を用いて検討した。その結果、(1)作製したp48発現plasmid vector ; pcp48のtransfection並びにp48発現adenovirus vector ; P48-Adの感染により良好なp48の発現が得られた。(2)p48遺伝子導入によりIFN-α誘導ISRE-reporter plasmidの転写活性は促進された。(3)p48遺伝子導入がIFN-α誘導PKRの発現に与える影響をnorthern、westem blottingにより検討したところ、p48遺伝子導入によりPKRの発現はmRNA量、蛋白量共に増強された。(4)p48遺伝子導入が蛋白翻訳開始因子eIF2αのリン酸化に与える影響を検討したところ、p48遺伝子導入によりIFN-αで誘導されるeIF2αのリン酸化は増強された。さらに、p48遺伝子導入のみでもeIF2αのリン酸化がみられた。(5)p48遺伝子導入がPKRによる蛋白合成阻害を促進するかをchloramphenicol acetyltransferase(CAT)蛋白活性、α-fetoprotein(AFP)産生量により検討したところ、p48遺伝子導入とIFN-αの併用により、CAT活性ならぴにAFP産生量は明らかに減少した。しかし、CAT、AFP、両mRNA量には全く変化がみられなかった。以上のことから、p48遺伝子導入は、肝癌細胞において、IFN-αによって誘導される抗ウイルス蛋白PKRの発現を増強するのみでなく、その蛋白翻訳阻害活性をも促進することが明らか.となった。今後は、これらの知見をもとに、p48遺伝子導入とIFN-αの併用によって肝癌細胞の増殖能やアポトーシス感受性に変化が生じるかどうかを検討する予定である。
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