SurvivinはInhibitor of apoptosis protein(IAP)ファミリーに属し、細胞増殖促進作用や抗アポトーシス作用を持ち、胎性期には種々の組織で発現しているが、成人組織ではほとんど発現していない。しかし、細胞の癌化に伴い、多くの癌で発現が認められようになる。我々は50例の肝細胞癌生検組織を用いてsurvivinの発現を検討したところ、40例に於いてsurvivinの発現が確認された。一方、正常肝組織では全く発現を認めなかった。以上のことから、本研究はsurvivinをターゲットとした肝癌治療の可能性を探ることを目的とした。我々は、ヒト肝癌細胞株(HuH-7、Hep3B)がsurvivinを強発現していること、また、Interferon-α(IFN-α)で処理するとsurvivinの発現が著明に低下する事を新たに見い出した。しかし、これらの細胞はIFN-α単独では細胞死が誘導されないことから、近年注目されているdeath ligandであるTRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)を併用添加したところ、著明な細胞死が誘導された。IFN-αによるsurvivin発現抑制がTRAILによる肝癌細胞死の増強に関与しているのではないかと考え、survivin発現plasmidベクターを用いて、survivinを強制発現させたところ、IFN-αによるTRAIL誘導アポトーシス増強効果が有意に減弱された。よってsurvivinの発現が低下することで肝癌細胞はTRAIL誘導アポトーシスに対してsensitiveとなることが明らかとなった。さらにsurvivinの発現をsiRNAを用いて阻害すると、IFN-α処理と同様に肝癌細胞はTRAIL誘導アポトーシスに対してsensitiveとなった。一方、マウスsurvivin遺伝子を用いてplasmid DNAワクチン後、survivinを発現するEL-4細胞を皮下移植し、その抗腫瘍効果を検討したが、十分な腫瘍増殖抑制効果は認められなかった。そこで、現在、survivin遺伝子を導入した樹状細胞を用いたワクチン実験を行っているところである。
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