1.目的 本研究では、多数の潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象にaberrant crypt foci(ACF)を観察し、UC患者の発癌におけるバイオマーカーとしての有用性を解析するとともに、その遺伝子解析を行った。 2.方法と結果 (1)UC患者におけるACFの解析 16人の緩解期のUC患者を対象に、既報に従い拡大内視鏡を用いてACFの陽性率、数を検討した。その結果、UC患者のACFの陽性率は94%で、健常人の28%よりも有意に高かった。UC患者のACF数は平均7.5個で健常人(1.5個)より有意に多く、特に、dysplasiaや癌を合併した症例では多かった。 (2)UC患者のACF数と背景因子との関係 ACF数と罹病期間との罹病期間との間には有意な相関性が認められた。罹患部位、性差、初発年齢とACF数との間には相関性は認められなかった。 (3)UC患者におけるACFの病理組織学的解析 非UCのACFに比べてリンパ球浸潤が多く、各腺管は大小不揃いであり、各細胞の核は腫大し、角張っており、クロマチンの増生が認められた。 (4)UC患者におけるACFのK-ras、APC、p53の解析 2-step-PCR法によりK-ras変異を検討したところ、UC患者のACFの陽性率はわずか20%であり、非UC患者のACF(78%)より有意に低かった。APCのC末端に対するポリクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行い、APC変異を検討したところ、いずれも変異は認められず、非UCのACFと同様であった。ACFにおけるp53の免疫組織染色を行ったところ、p53の蓄積は認められなかった。 3.結論 UC患者のACFを観察することは、UC合併癌のサーベイランスに有用である可能性が示唆された。UCのACFではK-ras変異の陽性率が低く、APC変異、p53の蓄積も認められず、今後マイクロアレイを用いた遺伝子解析を行う予定である。
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