研究概要 |
1.目的 本研究では、多数の潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象にaberrant crypt foci(ACF)を観察し、UC患者の発癌におけるバイオマーカーとしての有用性を解析するとともに、その遺伝子解析を行った。 2.方法と結果 (1)UC患者におけるACFの解析 20人のUC患者を対象に、既報に従い拡大内視鏡を用いて下部直腸領域のACFの視察を行った。その結果、健常人のACF数は平均1.5個であったのに対し、dysplasiaを伴わないUCではACF様病変数は平均6.6個と多く、dysplasiaを伴うUCでは平均13.6個とさらに増加していた。 (2)多変量解析によるUC発癌の危険因子の解析 UC患者のdysplasiaまたは癌を有する者と有しない者について、ACF数、性差、年齢、発症年齢、罹病期間、罹患部位の多変量解析を行った。その結果、ACF数(5個以上)と罹病期間が有意な危険因子であることが示された。 (3)UC患者におけるACFのAPC, K-ras, p53解析 UC患者のACFにおけるAPC変異の有無をtruncation assayにより検討したところ、いずれもtruncated bandは認められなかった。Two-step PCR RFLP法により、K-ras変異の有無を検討したところ、UC患者のACFではわずか15%に変異が認められた。p53遺伝子のExon 6,7,8,9についてSSCP法により変異の有無を検討したが、いずれも変異は否められなかった。 (4)p16遺伝子のメチル化 p16のメチル化の有無をmethylation specific PCR法にて検討した。UC患者のACFとdysplasiaでは、いずれも高率にp16のメチル化を認めた。 (5)UC患者におけるACFのmicroarrayを用いた解析 Affimetrix社のDNA microarrayを用いて解析し、現在clusteringを行っている。 3.結論 UC患者におけるACFの観察は、UC合併癌のサーベイランスに有用であることが示唆された。
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