研究概要 |
膵癌は難治性悪性腫瘍の代表であり、その予後は非常に悪い状態にとどまっている。早期発見が困難でありしかも転移、浸潤しやすいといつ解剖学的要因と共に、膵発癌の分子機構の複雑さもその一因と考えられる。このような治療困難な悪性腫瘍の新しい治療法として各種疾患に対する遺伝子治療が検討されている。さらに、宿主の全身管卑の立場から担癌状態では癌の進展に伴い、インスリン抵抗性が生じ糖輸送担体GLUT4が病気が進むと栄養状態の不良と独立の因子として低下してくる。本研究では糖輸送の観点から膵癌細胞に対する遺伝子治療の基礎的研究と臨床的宿主のインスリン抵抗性の改善を目的に研究を行った。本年度はヒト膵癌細胞株PANC-1,Capan-2を用いてantisense GLUT1mRNAの高発現株を作成し、stable cloneを得た。各々の細胞株からのcelllysateをSDS-PAGEからWestern Blot法にてGLUT1蛋白の発現抑制を確認した。GLUT1発現抑制した細胞株の細胞増殖速度をMTT法にて測定したところ、野生株に比較してGLUT1発現抑制株ではPANC-1では約42%の低下、Capan-2では35%の低下が認められ、細胞株によりGLUT1発現抑制による細胞増殖抑制の感受性は異なっていた。糖輸送活性の測定(3-o-methylglucose transport activity)では野生株に比較してPANC-1では51%まで低下し、Capan-2においては24%と著明な糖輸送活性の低下を示した。現在さらに、他の細胞株MIA-PaCa-2,AsPC-1、BxPC-3についてもantisense GLUT1mRNAの高発現株からGLUT1発現抑制株の作成を実験中であり、膵癌細胞株によるGLUT1発現抑制の感受性の差から細胞増殖の機構を検討している。
|