研究概要 |
I ベクターによる遺伝子発現の検討 (1)肝細胞での導入遺伝子の特異的な発現を目的とするため、FMEVタイプのレトロウイルス・ベクターのU3 regionに、B型肝炎ウイルスのエンハンサー領域を挿入し、さらに、CATマーカー遺伝子を組み込んだ10種類のベクターを作成し、Huh7、Alexander、HLEなどの肝癌細胞株に感染させた。結果、肝癌細胞株で他の細胞株に比べ導入遺伝子の発現効率が1.5〜2倍高いレトロウイルスの開発に成功し、マウスへのvivoの実験でも高いことを確かめた。 (2)FMEVタイプのレトロウイルス・ベクターのエンハンサー領域の上流に、メチル化を予防するため、URIと呼ばれるインシュレターを組み込みこんだ。血球系細胞のK562、Mam、間葉系細胞のNIH3T3、293では、ベクター導入後二週間の時点でマーカー遺伝子(CAT)の発現がコントロールに比べて、1.2〜1.5倍増加していた。長期にわたり高発現が続くクローンのエンハンサー領域のメチレーションPCRを行い、メチル化と導入遺伝子のサイレンシングとの関係を検討している。 II インシュレーターやSARの効果に関する検討 C57BL/6-GFPトランスジェニックマウスから骨髄細胞を採取し、ストローマ細胞・サイトカインを用いたin vivtroの系でluciferaseを発現するFMEVベクターに感染させて遺伝子を導入後、C57BL/6マウスに細胞を移植した。移植後、あらかじめ組み込んでおいた薬剤耐性遺伝子でin vivo selectionを行い、その後定期的にマウスの末梢血、肝臓を調べ細胞中に占めるドナー由来の細胞の頻度、そしてその細胞へのマーカー遺伝子の組み込み率,発現率を調べている。目的遺伝子を骨髄細胞に入れるため,臓器特異的長期発現を重視して今までに開発したレトロウイルスとB型肝炎ウイルスのハイブリッドベクターやメチル化予防ベクターの応用を検討している。
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