研究課題/領域番号 |
13670546
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西口 修平 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10192246)
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研究分担者 |
塩見 進 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30170848)
田守 昭博 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (30291595)
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キーワード | ミトコンドリア / 塩基変異 / 慢性肝炎 / 肝発癌 / インターフェロン |
研究概要 |
(1)発癌過程における遺伝子異常は染色体のDNAを中心に検討されており、癌遺伝子や癌抑制遺伝子の変化が発癌のメカニズムであると考えられている。我々は、肝癌において多数のミトコンドリアDNA塩基変異が存在するのみならず非癌部でも既に多数の変異が集積していることを報告しており、発癌における本変異の関与は非常に興味深い。炎症局所では、一酸化窒素をはじめとする大量の活性酸素種が産生されている。ミトコンドリアDNAは、核DNAと異なりヒストンを持たず修復機構も不完全であるため、この様な場では傷害を受けやすいと考えられる。今回、活性酸素種によるミトコンドリアDNAの変化を解析するため、培養細胞(HepG2)に一酸化窒素を作用させてミトコンドリアDNA塩基変異を解析した。D-looP部分のミトコンドリア遺伝子配列を解析したところ、NOC18(NO donor)添加前は4箇所であった変異が、新たに4箇所加わり8箇所になった。変異箇所は全てCであり、C→TあるいはC→Gの変異であった。炎症によるミトコンドリアDNA変異が発癌に直接関与するかどうかは現段階では不明であるが、細胞内酸化ストレスを増強してDNA傷害を増悪することは事実である。 (2)慢性肝炎症例の肝ミトコンドリアDNA塩基変異を解析し、インターフェロン投与が本変異に対してどのように作用するかを解析した。今回の検討で、慢性肝炎において多数蓄積しているミトコンドリアDNA塩基変異がIFN投与により著明に減少することが判明した。本現象は、組織学的な炎症の活動度の低下と非常に強く相関しており、慢性炎症によるDNAの不安定化を如実に反映している。本遺伝子の解析はインターフェロンの客観的効果判定の基準となる可能性もある。IFNによって肝発癌が抑制されることは周知の事実であり、ミトコンドリア遺伝子変異が発癌と密接に関係している。現段階では、個々の症例における発癌のリスクを評価する指標はなく、ミトコンドリア遺伝子の変異数の発癌における臨床的意義について解析することが必要である。
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