新生児・乳児型ペプシノゲン その発現調節機構および癌蛋白としての可能性の検討

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670548
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 北内 信太郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80305747)
• 研究分担者: 一瀬 雅夫 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50143425)
• キーワード: 骨粘膜 / ペプシノゲン / 発生 / 分化 / 成長 / 形態形成

研究概要

1)cDNAクローニングの結果明らかになった新生児・乳児型ペプシノゲン(PGF)およびキモシンの蛋白一次構造の検討結果から、合成ペプチドを作成、家兎に免疫を繰り返す事によって特異抗体作成を試みている。これまでPGFに対して2種類の抗体を作成し得ている。現在、免疫組織染色に用いて抗体の検討を行いつつある。
2)クローニングしたPGFおよびキモシンcDNAをプローブとして用いて、これまでに作成したラットgenomic libraryから、これらの遺伝子のgenomic cloningを行っているところである。これまでに得られたpositive cloneについての検討を現在行いつつある。
3)これまで独自に開発した消化管上皮分離法を用いて調整したラット胎児胃粘膜上皮組織よりRNAおよび蛋白可溶分画を調整し、胃の形態形成期から出生に至る胎生後期におけるPGF、キモシン、そして成熟型ペプシノゲン(PGA)の発現変化をそれぞれ遺伝子レベル(定量PCRでの解析)、蛋白レベル(ザイモグラフィーでの解析)で検討を行っている所である。これまでの所、胎児期の胃粘膜において、PGFの遺伝子発現が最初に生じ、その後キモシン遺伝子の発現が生じる事、胃の形態形成過程においてPGFの遺伝子発現がメインで、PGAはわずかなシグナルを呈するのみであるが、出生直前の時期に至り、キモシン遺伝子の発現が増強し、PGFを凌駕するようになる事が明らかになっている。
4)新生児ラットを用いたin vivoの実験系を用いて、出生後の幼若期に副腎皮質ステロイドなどの胃粘膜分化誘導因子投与を行なう事で、PGFからPGAへとペプシノゲン遺伝子発現のswitchingが生じる見出した。現在、独自に開発した胎児胃上皮組織器管培養系を用いて、dibutyl-cAMPをはじめとする胃上皮組織分化誘導因子によりPGFおよびキモシンからPGAへと遺伝子発現のswitchingが生じるかを検討中である。

研究成果

• [文献書誌] H.Fukamachi: "Mesenchymal transcription factor Fkh6 is essential for the development and differentiation of parietal cells"Biochemical and Biophysical Research Communications. 280. 1069-1076 (2001)
• [文献書誌] H.Yuasa: "Expression of cathepsin E and its expression with intestinalization in epithelial cells and tumor cells in rat glandular stomach treated with N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine"Journal of Toxicologic Pathology. 14. 29-35 (2001)
• [文献書誌] M.Naganuma: "Appendectomy protects the development of ulcerative colitis and reduces its recurrence"American Journal of Gastroenterology. 96. 1123-1126 (2001)
• [文献書誌] M.Oka: "Helicodoactor pylori and N-methyl-N'-nitro-N-nitrasoguanidine(MNNG)induction of dendritic cell infiltration of the pyloric mucosa of mongolian gerbil"Jounal of Hepatogastroenterology. 48. 160-166 (2001)
• [文献書誌] K.Kishi: "Membrane-bound arginine-specific serine protease from rat intestinal mucosa"Journal of Biochemistry. 130. 425-430 (2001)
• [文献書誌] M.Matsushima: "Reversible and competitive inhibition of enteropeptidase by 1-trans-epoxysuccinyl-1-leucylominodo(4-guanidino) butane(E-64)"Biomedical Research. 22. 207-210 (2001)
• [文献書誌] 一瀬雅夫: "胃粘膜上皮組織における胎児新生児型酸性プロテアーゼ遺伝子の発現変化に関する検討"Therapeutic Research. 22. 160-164 (2001)
• [文献書誌] 宮本昌彦: "加熱刺激が誘引となった食道全域にわたるはく離食道炎の一例"Gastroenterological Endoscopy. 43. 1157-1162 (2001)
• [文献書誌] 北内信太郎: "化学発光免疫測定法(Chemilunescent Immunoassay : CLIA法)を用いた全自動化学免疫発光検査システムARCHITECTi2000による血清ペプシノゲン測定の基礎的検討"Progress in Medicine. 21. 2451-2457 (2001)
• [文献書誌] 角嶋直美: "亜特異な形態を示し、粘膜筋板内のリンパ濾胞に中一低分化型癌成分の浸潤を認めたO-I型胃粘膜癌の1例"Progress of Digestive Endoscopy. 59. 86-87 (2001)
• [文献書誌] 塩谷昭子: "途上国と先進国で異なるピロリ菌除菌後の問題"総合臨床. 50. 2029-2031 (2001)
• [文献書誌] 井上泉: "女性内科-産婦人科医はどこまで対応するか"婦人科治療. 82. 826-831 (2001)
• [文献書誌] 柳岡公彦: "輸液の基礎と実際 消化器疾患"臨床医. 27. 50-51 (2001)
• [文献書誌] 中沢和之: "腹痛"臨床医. 935. 25-26 (2001)
• [文献書誌] 前北隆雄: "消化性潰瘍の治療-併用薬剤の注意点"臨床成人病. 31. 751-755 (2001)
• [文献書誌] 柳岡公彦: "消化器感染症Helicobacter pyloriの除菌療法"Medical Practice. 18. 1291-1294 (2001)
• [文献書誌] 矢作直久: "経5cmを越える大型大腸腫瘍の内視鏡的一括切除"消化器内視鏡. 13. 1224-1228 (2001)
• [文献書誌] 柳岡公彦: "消化器癌の内視鏡下治療"現代医療. 34. 65-71 (2002)
• [文献書誌] 北内信太郎: "臓器再生-再生医学"内科学会誌. 90. 155-161 (2001)
• [文献書誌] 北内信太郎: "消化管の分子生物学"消化管上皮の幹細胞""G. I. Research. 9. 538-542 (2001)
• [文献書誌] 前北隆雄: "Crohn病における抗TNF抗体"臨床成人病. 31. 1524-1526 (2001)
• [文献書誌] M.Ichinose: "Cancer Screening for Common Malignancies(G.Y.Wu and K.Aziz, eds.)"Humana Press. 87-102 (2001)
• [文献書誌] 塩谷昭子: "Helicobacter pylori 除菌後の問題点。Annual Review 2001消化器(戸田剛太郎、税所宏光、寺野彰、幕内雅敏編)"中外医薬社. 12-18 (2001)
• [文献書誌] 北内信太郎: "ペプシノゲン法とは、ペプシノゲン法ハンドブック(厚生省がん研究助成金による血清ペプシノゲン値による胃ガンスクリーニングに関する研究班 編)"日本メディカルセンター. 10-15 (2001)
• [文献書誌] 和田友則: "急性胃炎、消化器疾患の最新の治療2001-2002(戸田剛太郎、杉町圭蔵、中村孝 編)"100-102 (2001)