研究概要 |
1)申請者らがクローニングしたcDNAにより明らかになった新生児・乳児型ペプシノゲンおよびキモシンの蛋白の適当な部位を選択し、合成ペプチドを作成、monoclonalおよびpolyclonalの特異抗体作成を行った。作成した抗体はaffinity chromatographyによるこれらの酵素蛋白の精製効率化に貢献すると共に、蛋白発現量のモニターや免疫組織染色による産生細胞の同定に有力な系を提供している。 2)申請者らによりcDNAクローニングされた新生児・乳児型ペプシノゲンおよびキモシンcDNAを用いて,これらの遺伝子のgenomic cloningを行い、遺伝子構造を決定する。特に5'-flanking regionの遺伝子構造の検討を行うと共に、遺伝子発現に関わるtrans-acting factorの検討のための系を作成している。 3)新生児・乳児型ペプシノゲンについてのヒトでの実験系確立を目標に、ヒト胎児胃粘膜より抽出したRNAよりcDNAライブラリーを作成、前述のラットcDNAをプローブとしてヒト新生児・乳児型ペプシノゲンcDNAのクローニングを行った。 4)申請者らが独自に開発した消化管上皮分離法(BBRC222,669-677,1996)を用いて調整したラット胎児胃粘膜上皮組織を用いてRNAおよび蛋白可溶分画を調整し、胃の形態形成期から出生に至る胎生後期における新生児・乳児型ペプシノゲン、キモシン、そして成烈型ペブシノゲンの発現変化をそれぞれ遺伝子レベル(light cyclerによる定量PCRでの解析)、蛋白レベル(特異抗体を用いたwestern blotting、ザイモグラフィーでの解析)で検討した。 5)申請者らが独自に開発した胎児胃上皮組織器管培養系(Differentiation.62,239-247,1998)を用いて副腎皮質ステロイド、dibutyl-cAMPをはじめとする胃上皮組織分化誘導因子により新生児・乳児型ペプシノゲンおよびキモシンから成熟型ペプシノゲンヘと遺伝子発現のswitchingが生じるかを検討している。また、新生児ラットを用いたin vivoの実験系を用いて、出生後の時期にも前述の胃粘膜分化誘導因子投与に伴って、ペプシノゲン遺伝子発現のswitchingが生じるかを検討している。 6)平成14年度に新生児・乳児型ペプシノゲンおよびキモシンの癌胎児蛋白としての可能性を検討する為に、ラット胃の伝統的な化学発癌実験系を用いて、前癌病変および胃癌を作成し、新生児・乳児型ペプシノゲンおよびキモシンのこれらの組織における発現変化を検討した。
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