DNAチップによる膵臓がん早期診断マーカーの探索

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670549
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 間野 博行 自治医科大学, 医学部, 教授 (90240704)
• キーワード: 膵臓がん / DNAチップ

研究概要

膵臓がんは本邦成人の悪性腫瘍による死因の第5位を占める極めて予後不良の疾患である。膵臓がんを早期に発見することはいまだ極めて困難であり、新たな診断マーカーの同定が待たれている.DNAチップ・DNAマイクロアレイ(以下DNAチップ)は数千〜数万の遺伝子の発現変化を数回の実験で解析可能にする最新の研究機器であり、本システムを用いることで膵臓がんの新たな分子診断マーカーが同定されることが期待される。我々はまず正常膵組識と膵臓がん組織とでDNAチップ解析を行い両者を区別する遺伝子の同定を試みたが、最も発現変化が著明な遺伝子の一つはインスリン遺伝子であった。正常膵組織の多くを占めるのが分泌腺細胞であり、膵臓がんのほとんどが膵管上皮由来であることを考えると、両者の間でインスリンの発現が異なるのは当然である.したがってこのような単純なサンプル比較によっては「膵分泌腺と膵管上皮との違い」を検出することになり、膵臓がん特異的なマーカーの同定は困難と予想された。我々は、膵臓がん細胞および正常膵管上皮細胞の両者が膵液から回収できることに着目し、健常人、慢性膵炎患者および膵臓がん患者などに検査・診断目的に内視鏡的逆行性膵胆管造影および膵液採取を行う際に、患者さんの承諾の元で膵液の一部をいただき膵管細胞を純化し保存するパンク事業を開始した。これらバンク細胞を用いてAffymetrix社GeneChipシステムによる解析を行った。その結果膵臓がん組織や正常膵組織などに比べて膵管上皮群(正常および癌を含む)は遺伝子発現プロファイルが良く似ておりtwo-way clusteringによっても同じbranchに分類された.またこのチップ解析によって膵臓がんの膵液細胞特異的に発現する遺伝子として膜蛋白質を含め約10ヶほど同定された。

研究成果

• [文献書誌] Bony, C. et al.: "A specific role of phosphatidylinositol 3-kinase γ : a regulation of autonomic Ca^<2+> oscillation in cardiac cells"J. Cell. Biol.. 152. 717-727 (2001)
• [文献書誌] Kano, Y. et al.: "In vitro cytotoxic effects of a tyrosine kinase inhibitor STI571 in combination with antileukemic agents"Blood. 97. 1999-2007 (2001)
• [文献書誌] Miyazato, A. et al.: "Identification of myelodysplastic syndrome-specific genes by DNA microarray analysis with purified hematopoietic stem cell fraction"Blood. 98. 422-427 (2001)
• [文献書誌] Ohmine, K. et al.: "Characterization of stage progression in chronic myeloid leukemia by DNA microarray with purified hematopoietic stem cells"Oncogene. 20. 8249-8257 (2001)
• [文献書誌] Yamashita, Y. et la.: "Sak serine/threonine kinase acts as an effector of Tec tyrosine kinase"J. Biol. Chem.. 276. 39012-39020 (2001)
• [文献書誌] Makishima, H. et al.: "DNA microarray analysis of T-cell type lymphoproliferative disease of granular lymphocytes"Br. J. Haematol.. (in press).