研究課題/領域番号 |
13670553
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
太田 慎一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30185269)
|
研究分担者 |
藤原 研司 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80101088)
新井 晋 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20306294)
|
キーワード | 大腸癌 / COX-2 / プロスタグランジン / VEGF / PPAR |
研究概要 |
1.間質細胞および大腸癌細胞株を用いた検討 プロスタグランジン(PG)合成酵素であるCOX-2がヒト大腸腺腫においてマクロファージを主体とした間質細胞に発現していた事からヒトマクロファージモデルであるU-937細胞株を用いて細胞膜受容体による腫瘍血管新生因子の一つである血管内皮増殖因子(VEGF)産生亢進作用機構の検討を行った。PGE_1とPGE_2の作用を比較するとPGE_1の作用がより強力であった。これらのPGが作用する受容体としてPGE受容体を考えた。外因性に与えたcAMPにも同様の亢進作用があったのでPGE受容体のうちEP_2とEP_4を介してPGが作用している可能性を検討した。U-937細胞にはこれらの受容体のmRNAが発現しており内因性cAMPもPGE1によって上昇した。したがってPGによるVEGF産生促進はPGE受容体を介していることが推定されたが、他のcAMPをセカンドメッセンジャーとして作用を発揮する受容体としてPGI受容体が関わっている可能性を次に検討した。PGI受容体に特異的なリガンドであるシカプロストとイロプロストは劇的にVEGF産生を亢進させた。これらの結果からPGの細胞膜受容体としてはPGE受容体とPGI受容体が重要であると考えられた。PPARγとPPARδは大腸癌との関連が示唆される核内受容体であるが、PGJ_2誘導体とPGI_2誘導体がリガンドとして作用する事が報告されている。PGJ_2誘導体はVEGF産生を劇的に亢進させたがPGI_2誘導体はこの作用が無かった。一方、大腸癌細胞株ではPGE受容体やPGI受容体のリガンドは作用が無く、PPARγとPPARδのリガンドに有意の亢進作用が認められた。従ってこれらの受容体を発現する間質細胞や癌細胞のプロスタグランジン刺激によるVEGF産生促進が大腸腺腫の癌化過程に関わっていると考えられた。 2.胃ポリープにおけるCOX-2の発現 大腸では腺腫においてCOX-2が間質細胞に発現していたが、腺腫に特異的な現象であるか否かを検討するには他の腫瘍との比較を行う必要がある。大腸では過形成性ポリープは小さなものが多くポリペクトミーされる機会も殆ど無いので、胃における腺腫と過形成性ポリープでのCOX-2発現を検討した。その結果胃過形成性ポリープでは大腸腺腫と同様間質細胞にCOX-2が発現している事が判明した。免疫組織化学的検討により発現細胞は筋線維芽細胞とマクロファージと考えられた。
|