研究概要 |
胃粘膜の恒常性を保つ仕組みを明らかにするために、ラット実験潰瘍治癒過程において抗ムチンモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討を行い、複数に分類される粘液細胞(表層粘液細胞・副細胞・前庭部粘液細胞)由来のムチンを比較し、以下の結果を得た。 1.傷害惹起物質(エタノール,塩酸)をラットに投与し、急性胃粘膜傷害を引き起こすと、胃体部粘膜では、傷害の早期から胃体部表層粘液に特異的に反応する抗体RGM21の染色域の狭小化が認められた。逆に、正常では認められないRGM26及びHCM31に染色性を示すムチンを産生することが確認されたが、このときのRGM26の染色域は狭部付近であり、HCM31の染色域はより表層であった。また、RGM26は傷害惹起物質投与後の早期から染色性が認められるが、HCM31は少なくとも48時間以上経過してから染色性を認めるようになった。 2.RGM26及びHCM31の染色域はRGM23の染色域に含まれており、これらのコアペプチドはMUC5ACであることが推察された。また、胃の深層ムチンに特異的な抗体HIK1083は傷害によって染色域が広がる傾向が認められた。 3.以上より、ラット急性胃粘膜傷害では・胃体部の治癒過程において、特異的なムチンの変動を生じることが確認された。その変動は慢性潰瘍の治癒過程において認められる特異的なムチンと同様であったが、発現の部位や時間経過による変化には慢性潰瘍とは異なる部分も認められ、胃粘膜の恒常性を保つ仕組みにおけるムチンの役割を考える上で重要であると推測された。
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