研究概要 |
C型肝炎ウイルス感染およびインターフェロン治療に対する宿主感受性とインターフェロンのシグナル伝達過程で重要な転写因子であるIRF-1遺伝子多型の関係を検討した。IRF-1遺伝子多型はプロモーター領域の4つの変異を検討したが、この4つの変異はリンクしていたため、-300位のG/Gタイプ、G/Aタイプ、A/Aタイプの3つを多型の指標とした。 はじめにA/AタイプとG/Gタイプを持つ肝癌細胞株よりPCR法によりプロモーター領域を増幅し、ルシフェラーゼを発現するベクターに組み込んだ。このリポーターアッセイにより、A/AタイプはG/Gタイプに比較してIRF-1プロモーター活性が有意に高いことが判明した。次に、-300位の変異を検出するPCR-SSCP法を開発した。しかし現状では本法の安定性に関してはまだ改良の余地がある。このPCR-SSCP法を用いて健常人とC型慢性肝炎患者の単核球から抽出したDNAを検査した。その結果G/GタイプやG/Aタイプは多数例存在するが、A/Aタイプは有意に少なかった。次に健常人より得られたリンパ球を培養し、インターフェロン添加前後で培養液中に産生されたIFN-g, IL-10の濃度を測定した。その結果A/Aタイプより得られたリンパ球ではインターフェロン添加によりIFN-gの産生が有意に増加し、IL-10の産生が有意に低下した。さらに慢性肝炎患者にインターフェロン治療する際、初回投与時に0, 6時間の時点で採血し、T helper細胞分画におけるTh1,Th2細胞の比率をcell sorterにて測定した。その結果、A/Aタイプではインターフェロン投与後、Th1細胞分画が有意に増加することが明らかとなった。さらに症例数を増やして検証する必要があるが、IRF-1プロモーター遺伝子多型によりTh1活性に差が生ずる可能性が示唆された。 治療効果との相関に関して今後検討しなければならない。
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