研究概要 |
C型慢性肝炎は外来侵入生物であるC型肝炎ウイルス(HCV)と宿主の反応により生ずる慢性疾患である。宿主反応にはインターフェロン(IFN)やサイトカイン産生が深く関わり、その中でもIFNの転写調節因子であるIRF-1は宿主のTh1反応(IL-2やIFN-γ)を惹起するに必須の因子である。われわれは昨年度までの検討からIRF-1遺伝子のプロモーター領域にSNPsを発見し、そのタイプにより末梢血単核球からのTh1,Th2サイトカイン産生に違いがあることをつきとめた。そのためIFN治療を施行するC型慢性肝炎患者のIRF-1プロモーターSNPsタイプとIFN治療反応性につき相関を求めた。レトロスペクティブに100例、プロスペクティブに40例に十分な研究の説明をした後、承諾をいただき、末梢血単核球を採取、DNA精製後、IRF-1プロモーターSNPsを直接シークエンス法にて検討した。その結果、IFN治療に対するsustained viral response(SVR)との有意な相関は認められなかった。しかし、血清AST, ALT値が基準値以下に安定したbiochemical response(BR)の症例との相関を求めたところ、有意ではなかったがSNPsタイプがTh1 dominantに働く可能性のあるタイプでBR率が低い傾向がみられた。これまでの検討からIRF-1 SNPsのTh1 dominant typeではIL-10産生は弱く、IFN-γ産生は強く、ウイルス感染に対して防御的に作用することが推測されたが、本年度の研究からは症例数が十分でないこともあり、有意な治療反応性との相関は認められなかった。しかし、Th2 dominantタイプでは肝内の炎症が抑制されることが推定され、臨床的には有意ではなかったが、従来の報告に一致する結果であったと考えられた。
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