生体への青色光照射により腫瘍組織では非腫瘍組織に比して赤色偏移した自家蛍光が励起される現象を利用して非侵襲的がん診断法に関する研究を行った。 内視鏡下に消化管粘膜の自家蛍光像を画像処理によりモニター表示する装置を用いた検討では、大腸では腫瘍部と背景正常粘膜との自家蛍光の差が大きく病変の検出が容易であったのに対し、胃粘膜では粘膜炎の存在等のため自家蛍光観察による正診率は大腸に比し低かった。 診断能の向上のための最適な励起光に関する基礎的検討を行なった。2種類の励起光(紫色光、青色光)による自家蛍光像を比較検討した結果では、胃の低〜未分化癌を除き青色光励起で自家蛍光像のコントラストが高く病変認識が容易であった。 自家蛍光スペクトルを定量的に解析するため、内視鏡先端に装着した透明フードを病変の境界に接触させることにより測定距離を一定に固定して病変部と正常粘膜部の境界を含むように400-700nmの範囲の自家蛍光スペクトルを測定線上連続して面状に計測できる新たなスペクトル連続測定装置を用い、異なる励起光(350-370nm、380-400nm、400-470nm)による自家蛍光スペクトルを同一病変に対して測定した。いずれの励起光とも緑色部にピークを有する自家蛍光スペクトルが得られたが、境界を挟んだ病変部と正常粘膜部でスペクトル波形は異なっており、正常部蛍光スペクトルの緑色部ピークに比し、胃高分化腺癌、大腸腺腫・腺癌では青色光励起の場合が癌部蛍光スペクトルのピークとの差が大きく、胃の低〜未分化癌では紫外光および紫色光励起でスペクトルピークの差が大きかった。 大部分の消化器癌病変では青色光励起の場合が最も病変検出能が高くなると考えられたが、胃の低〜未分化型癌に関しては紫外光・紫色光の方が自家蛍光による診断能が優れており、各種腫瘍に特異的な蛍光診断には青色光以外の励起光の使用も有用と考えられた。
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