研究分担者 |
河合 隆 東京医科大学, 医学部, 講師 (40266490)
日高 道生 東京医科大学, 医学部, 助手 (90338830)
平良 悟 東京医科大学, 医学部, 助手
菊池 達範 東京医科大学, 栄研化学株式会社・生物化学研究所, 研究員
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研究概要 |
1.糞便CEA、CA IIの測定:carbonic anhydlase II(CA II)やCEAは大腸癌細胞内に豊富に存在するが、糞便中に出現する機序としては単一ではなく、癌以外の組織や体液、血球など複数の因子が関与しているとされている。そこでまず、健常者ならびに大腸癌患者の糞便蛋白の定量を行い、出血や血漿蛋白漏出のマーカーである糞便hemoglobin(Hb)やalbumin(Alb)、α1 antitrypsin(α1 AT)濃度と比較検討した。その結果、 (1)大腸癌患者の糞便CA II、CEA濃度はともに健常者に比べ有意に高かった。 (2)健常者において糞便CA II高濃度の検体がみられ、糞便Hb、Alb、α 1AT濃度と有意に相関した。CA IIは癌細胞以外にも赤血球中に高濃度に含まれるため、健常者にみられる高い糞便CA II濃度には、Hb、Alb、α 1ATと同様に、痔疾等の出血機序が少なからず関与していると考えられる。 (3)健常者における糞便CEA濃度も高値の検体がみられたが、出血や血漿蛋白漏出のマーカーの糞便濃度との相関はCA IIの場合に比べ低かった。健常者の糞便中には、癌組織由来のCEAときわめて類似したCEA関連抗原(NFA-1、NFA-2、NFCAなど)が存在し、免疫学的にはこれらの物質を識別できないことが本結果をもたらしたと推察される。 2.磁気細胞分離システムによる糞便からの上皮細胞の分離:HEPES 緩衝液で希釈分散した糞便に、上皮細胞の糖ペプチド膜抗原に対する特異抗体Ber-EP4を結合したビーズを混和し上皮細胞(膜)を分離した。本研究では、大腸癌患者におけるDNA量およびCA II濃度は報告例(Loktionov A et al. Clinical Cancer Research,4,337-342,1998)に比べ低い結果となった。この差異は、本研究における凍結保存便の使用により生じた可能性が考えられ、今後新鮮便を用いた検討を予定している。
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