経口免疫寛容誘導への肝臓の関与を明らかにする目的で、OVA経口投与による寛容誘導モデルを使用して解析を行い下記の成果を得た。 <平成13年度> アイソトープラベル抗原を用いたオートラジオグラフィーにより、経口寛容が成立する抗原は肝内に移行していることが明らかにされた。さらにその際には肝内ではマクロファージでなく類洞内皮細胞において機能分子発現が増強しており、類洞内皮細胞が寛容が導かれる抗原の取込みに関与する可能性が示された。 <平成14年度> 経口寛容誘導時の肝内におけるサイトカイン動態の検討により、非誘導時と比べ肝内では特定のTh1、Th2偏向は認めず、ケモカインプロファイルに関しても有意差は認めないことが明らかになった。一方、寛容誘導時には肝内に浸入した活性化T細胞がアポトーシスに陥ることが示された。これらのことから、肝臓の経口寛容誘導への関与はサイトカイン、ケモカインによるのではなく、肝内での活性化リンパ球のアポトーシスにより担われている可能性が示された。 <平成15年度> さまざまな免疫調節性細胞をそれぞれ単独で除去しても経口寛容誘導は維持されたことから、経口寛容誘導には肝内のさまざまな免疫調節性細胞がオーバーラップして関与しており、どれかひとつの細胞が欠損しただけでは経口寛容誘導に支障をきたさないことが明らかにされた。また経口寛容誘導に深く関わる現象である肝内における活性化T細胞のアポトーシスは、抗原特異的な現象でありながら抗原非特異的なマクロファージにより担われることが示された。
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