研究概要 |
目的:慢性膵炎の炎症反応の進行や膵臓癌の増殖、転移において各種細胞増殖因子が重要な役割を果たしている。Fibroblast Growth Factor(FGF)-10は間質細胞で産生され上皮細胞の増殖を促進し、FGF-7(KGF)よりその作用は強力とされている。膵炎モデルと培養膵臓癌細胞における、FGF-10,FGF-7と、両者の共通の受容体KGF receptor(KGFR)発現と局在を検討した。 方法:1.膵炎モデル;ラットアルギニン膵炎モデルを作成、経時的に膵臓組織を摘出し、FGF-1OとFGF-7の発現、局在をWestern blot、RT-PCRと酵素抗体法で検討した。2.培養細胞;培養膵臓癌細胞におけるFGF-10,FGF-7,KGFR mRNAの発現をRT-PCR法で検討した。3.KGFR抗体;ヒトKGFRに特異的なアミノ酸をウサギに免疫した後、血清を採取した。4.Antisense oligonucleotide;不死化膵管細胞と培養膵臓癌細胞に対するFGF-10とFGF-7の増殖抑制効果検討のため、Morpholino antisense oligonucleotideを合成した。 結果と展開:1.膵炎モデルでは、3日目以降で腺房細胞は大部分が消失し7日目にはほとんどの腺房細胞が再生した。FGF-10,FGF-7タンパクともに増加し、FGF-7は正常膵臓と膵炎組織の膵島細胞に、FGF-10は3日目以降の膵炎組織の血管平滑筋細胞に豊富な局在がみられた。2.培養膵臓癌細胞で、FGF-1O,FGF-7,KGFR mRNAの発現が認められた。3.得られたウサギ抗ヒトKGFR抗体で膵臓組織におけるKGFR局在を検討する。4.FGF-10とFGF-7に対するantisense oligonucleotideを用い培養膵臓細胞増殖への影響を検討中である。
|