本研究では、消化管各部位に見られるICCのsubtypesの微細構造と特異的分布を明らかにすることを目的として、実験用げっ歯類を材料として以下のような検索を行った。 2001年度:c-KIT免疫組織化学により、ラット胃幽門部のICCは筋層間神経叢、輪走縦走両筋層内に加えて、輪走筋最内層と粘膜下結合組織層との境界部に存在することを示した。c-kitに突然変異のあるWs/Wsラットでは、両筋層内のICCは消失していたが、筋層間神経叢と輪走筋最内層部のICCは観察された。Ws/Wsラットで特定のsubtypesが残存する意義についてICCの細胞学的異型性の観点から考察した。また、微細構造上シナップスと認められる構造が、両筋層内のICC、および平滑筋細胞に認められた。このことから、ラット胃幽門部の平滑筋は輪走筋、縦走筋ともICCを介する間接支配と、神経による直接支配との平行支配を受けるものと結論された。 2002年度:免疫組織学的検索によりマウス胃における領域毎のICCの分布とgap junctionの密度について明らかにした。噴門、胃底、胃体(重層扁平上皮部)の輸走縦走両筋層には多くのICCが観察されたが、筋層間神経叢には認められなかった。筋層間神経叢のICCは胃体(腺上皮部)より出現し始め、幽門部には非常に密度高く観察された。一方、gap junction蛋白Cx43は、噴門、胃底、胃体(重層扁平上皮、幽門部を通じて、輸層筋層に散在性に観察されたが、胃体(腺上皮部)のICCの少ない部位では、高い密度で観察された。これらの観察より、マウス胃では、噴門、胃底、胃体(重層扁平上皮部)、幽門部の輪走筋層の細胞間の電気的結合度は弱く、豊富なICCが神経信号の伝達に介在するものと推定された。 2003年度:c-KitおよびPGP9.5免疫組織化学染色を施したモルモット小腸全載伸展標本の共焦点レーザー顕微鏡観察により、神経、平滑筋、ICCの各subtypesとの三次元的関係を明らかにし、蠕動運動の運動単位にかかわるICCについて数量的に考察した。
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