研究概要 |
【背景と目的】我々は、ラットにインドメタシン(Indo)を注腸するとCrohn病に類似する小腸縦走潰瘍(LUSI)が形成されるが、腸内細菌叢由来のリポ多糖が重要な働きをしていることを見いだした。リポ多糖の標的細胞がマクロファージ(Mφ)であることを考慮し、この研究では,ラットLUSIモデルにおけるMφならびにMφ関連性炎症性サイトカイン(CKN)とマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の役割を明確にする。【方法ならびに結果】6週齢雄性WistarラットにIndo 24mg/kgを注腸した。Mφ障害物質であるジクロロメチレン・ジホスホネートを含有するリポゾーム(Cl_2MBP-lipo)腹腔内に投与すると、3日後のラット小腸内Mφ数は著減した。そのMφ除去ラットにIndoを投与すると、LUSIは78%抑制された。Indo注腸3時間前に抗TNF-α抗体を腹腔内投与するとLUSIは用量依存性に抑制された。また、抗IL-1β抗体、抗IL-6抗体でも同様であった。これらの抗CKN抗体を併用投与するとLUSIはさらに低下し、抗体3種類を全て投与すると87.5%の抑制率となった。Mφ除去ラットにリコンビナントCKNを投与するとLUSIが再現された。Indo投与後、3、6,12,24時間、3、7日の経時的LUSIをみると24時間後がピークであった。同様の時間的経過でMφ関連,MMPsを免疫組織化学的あるいはザイモグラフィーでみてみると、MMP-3がLUSIの推移と最も相関していた。また、広域MMP阻害剤を投与するとLUSIは著明に抑制され、その時もMMP-3が有意に相関していた。【結論】実験的LUSIの発生には、Mφの活性化とそれに由来する炎症性CKNならびにMMP、特にMMP-3が大きく働いている。
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