研究課題
基盤研究(C)
炎症性腸疾患(Crohn病および潰瘍性大腸炎)では、腸粘膜透過性の亢進を認めることが知られている。管腔内に存在する種々の炎症惹起物質(エンドトキシンなどの菌体成分、毒素など)は上皮層を透過すると粘膜内の炎症担当細胞を慢性的に刺激する。そのため、腸粘膜透過性の亢進は炎症性腸疾患の発症および病態の進展において重要な役割を担っていると考えられているが、不明な点も多い。今回の我々の研究では、単層培養細胞(T84)および炎症性腸疾患ラットモデル(5%デキストラン硫酸惹起腸炎)を用いた実験を行ない、腸粘膜透過性亢進の機序として、上皮細胞間タイトジャンクションのバリア機能を検討した。さらにタイトジャンクションのバリア機能に対する炎症性腸疾患治療薬(エカベト、5-アミノサリチル酸)の影響を検討した。タイトジャンクションの構造と局在は主に免疫染色で、粘膜透過性は培養細胞ではtransepithelial electric resistance (TER)、またラットではエバンスブルーの透過量を用いて調べた。培養細胞においては、インターフェロンγで処理することにより免疫染色でみられるタイトジャンクションの正常網目構造は破綻し、TERが低下したが、エカベト投与により改善傾向がみられた。ラット腸炎モデルにおいては、大腸の腸管長、組織ミエロペルオキシダーゼ活性、組織学的炎症細胞浸潤、タイトジャンクション蛋白の分布、粘膜透過性(エバンスブルー)を評価し、いずれも5-アミノサリチル酸投与により改善がみられた。以上のことから、炎症性腸疾患に対する治療薬はタイトジャンクションの傷害を軽減し、抗炎症作用の一部を担っていることが示唆された。我々のこれらの結果は、腸粘膜上皮細胞間タイトジャンクションの見地から腸炎を治療するという新しい臨床的可能性を示唆している。
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