研究概要 |
脂肪肝では、正常肝に比し移植肝の生着率は明らかに低いが、その対策の第一として本研究では肝虚血再灌流過程で起こる障害を制御する方策を追求することを目的にしている。 私共の研究ではこれまでに、アルコール性脂肪肝では虚血再灌流後、好中球ケモカイン(走化・活性化因子)の関与から好中球活性化がおこり、アポトーシスを介して細胞壊死が惹起されることが判明した(Hepatology32:278,2000)。また、この脂肪肝では、肝マクロファージ機能を抑制すると、虚血後の好中球ケモカイン産生がほぼ完全に抑制され、肝機能は正常に復帰することも証明された(J Hepatology 2002 (in submission))。 これらの検討の際、アルコール性脂肪肝での好中球浸潤と炎症性肝壊死にはケモカインが細胞外マトリックスに固着していることが必要条件であり、この現象は治療法開発に応用可能と考えた。また、私共は、脂肪肝全般で出現するアポトーシスには、uncoupling protein-2の発現亢進を介したATP産生低下などのミトコンドリア機能異常が関与していることも見い出したため、この点も治療法開発のポイントとして注目している。したがって、今後は、炎症性ケモカイン産生を抑制することに加えて、脂肪肝における「変化したマトリックス構築」を一旦解体することとミトコンドリア機能異常を是正することで、異所に移された臓器の適合能が高まる可能性を追求したいと考えている。
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