研究概要 |
本研究の目的は、ヒト癌細胞株(親株)とその抗癌剤耐性株を用いて分子標的及び抗癌剤耐性因子の遺伝子発現プロファイルの解析等を行うことにより、抗癌剤感受性の予知因子を同定することにある。平成13年度は以上の基盤となる基礎データを収集するために、親株を中心に検討をすすめ、また抗癌剤については、消化器癌に有用性が確立されているthymidylate synthase阻害剤(5-FU、raltitrexed等)を中心に検討をすすめた。使用した細胞株は、ヒト大腸癌細胞株6株であり、それぞれC1、H630、H508、H716、C2A、C4であった。透析血清使用下の倍加時間は24時間前後と(17〜31時間)ほぼ安定しており、5-FU、raltitrexed(RTX)に対する感受性(IC_<50>)はC1(0.18μM、-) H630 (39.0μM、9.3nM)H508(0.06、-)H716 (813、65.0) C2A(11.0,6.6) C4 (0.62、0.82)であった。標的分子であるthymidylate synthase (TS)のmRNA発現レベル(×10_<-3>a mol/μl)は、それぞれ7.70、7.70、3.85、30.8、61.5、38.5であった。また生化学的レベルでは、TS catalytic activity, TS absolute amount (pmol/mg/min : fmol/mg)は、それぞれ(2.00:202)、(2.57:248)、(1.22:258)(6.63:451)、(0.59:327)、(0.41:68)であった。親株7株のみの検討では、標的酵素TSに関しTS mRNAとTS catalytic activityとの相関は極めて良好(R^2=0.987)であり、またabsolute amountとの相関も良好(R^2=0.890)であったが、5FU感受性(IC_<50>)とcatalytic activity, TS absolute amount、TSmRNAとの相関性は明瞭ではなかった。5-FUはRNAも標的になっているため、今後はraltitrexedにて上記を確認する予定である。また耐性株を用いて、更にCPT-11、TXL、TXT、CDDP、Oxaliplatin等の薬剤の検討をも行う予定である。分子標的および耐性因子の遺伝子発現プロファイルについては、DNA arrayでの検討が有用であるが、核酸代謝関連酵素等は既して発現が低いため検出が容易ではない。このためarrayにスポットするDNA断片の最適化が必要であるが、ノーザンブロットに準ずる検出精度を実現するために、その最適化を試行錯誤で調整中である。
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