研究概要 |
本研究では、ヒト癌細胞株で遺伝子発現プロファイルの解析を行い、抗癌剤感受性の予知因子を同定するとともにそれらを基盤とした合理的化学療法の開発が主目的である。平成15年度は、消化器癌に有効な5-fluorouracil(5-FU)、raltitrexed(RTX)に対する感受性と薬剤感受性因子の遺伝子発現プロファイルについてヒト大腸癌細胞株Cl、H630、H508、H716、C2A、C4の6株を用いて検討した。薬剤感受性試験(MTTアッセイ96時間法)での5-FU(μM)、RTX(nM)に対する感受性(IC_<50>)は、それぞれCl(0.18、未検)H630(39.0、9.3)H508(0.06、未検)H716(813、65.0)C2A(11.0,6.6)C4(0.62、0.82)であった。遺伝子発現プロファイルは以下の代表的な遺伝子(カッコ内関連薬剤)を中心に検討した。TS、DPD(5-FU)、NADPH/キノン酸化還元酵素、DT-ディアフォラーゼ、NADPH/シトクロムP450<P450red.>(MMC)、グルタチオン<GSH>、グルタチオンS転移酵素<GST, GSTπ>(CDDP)、トポイソメラーゼI、細管多特異的有機陰イオン輸送体<cMOAT>(CPT-11)、MDR1、MRP(adriamycin)、αチューブリン、βチューブリン、GST(taxolとtaxotere)などである。この結果、5-FU感受性と5%の水準で有意だったのは、orotate phosphoribosyltransferace(OPRT)、proliferating cyclic nuclear antigen(PCNA)であった。OPRTの発現量が多ければ、5-FUは5-fluorouridinemonophosphateへと同化され易くなることことが期待され、5-FU感受性との相関性が示唆された。
|