研究概要 |
マウスconcanavalin A(Con A)誘導性肝障害モデルは、ヒトのウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎に似た症状を示すことが知られている。昨年までの本研究でC57BL/6(B6)背景LECT2遺伝子欠損(LECT2-KO)マウスにおいてCon A肝炎の重篤化が見られ、その原因が肝臓CD3int NK1.1^+細胞の倍増であることが示唆された。今年度は、同マウスを用いさらに詳細な解析をした。25mg/kg Con Aを投与3時間後の、肝臓MNC画分のCD3int NK1.1^+細胞のFasL陽性細胞、アネキシン陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで調べることにより、LECT2-KOマウスでは野生型より両陽性細胞の割合が増加していることが明らかとなった。このことはLECT2-KOマウスの肝臓CD3int NK1.1^+細胞の倍増によりCon AによるCD3int NK1.1^+細胞の細胞障害性が強く誘導されたことを示唆するものである。肝臓CD3int NK1.1^+細胞の多くはNKT細胞であることが知られていることより、NKT細胞を検出するためにCD1dテトラマーを用い陽性細胞の割合を調べた。その結果、野生型に比べて約2倍のCD1dテトラマー陽性細胞がLECT2-KOマウスの肝臓に存在し、肝臓NKT細胞が増えていることが明らかとなった。さらにLECT2-KOマウスの肝臓NKT細胞の性質を調べるために、細胞障害活性、NKT細胞の特異的活性化物質であるα-Galactsyl ceramide(α-GalCer)による活性化について解析した。その結果、B6由来の胸腺細胞を標的としたNKT細胞細胞障害活性の増加、in vivo,in vitroでのα-GalCer刺激によるIFN-γ,IL-4の産生量の増加が観察され、特にIL-4産生が顕著に増加していた。 以上のことから、Con A肝炎におけるLECT2-KOマウスでの肝炎の重篤化は肝NKT細胞の増加が原因であり、それがCon A刺激によるNKT細胞の過剰反応につながり肝障害が重篤化することが明らかとなった。さらにLECT2-KOマウスの肝NKT細胞はTh2型に傾いていること明らかとなった。LECT2-KOマウスにおいてNKT細胞が増加していたことより、LECT2がNKT細胞の発生分化、或いは生体内での恒常性維持の機能調節を抑制的に制御することが考えられた。
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