研究概要 |
マウスConcanavalin A(Con A)肝障害モデルは、ヒトの自己免疫性肝炎に似た症状を示すことが知られている。BALB/c及びC57BL/6(B6)背景LECT2-KOマウスにおいてCon A肝炎の重篤化が見られ、知られているCon A肝炎に関わるサイトカインの中で唯一、IL-4の産生上昇が観察された。B6背景マウスを用い詳細な解析をした。25mg/kg Con Aを投与5時間後、野生型ではほとんど変化が認められなかったがLECT2-KOマウスではすでに肝障害の指標であるGPTの上昇が観察され、組織染色においても肝細胞のアポトーシスをはじめとする肝細胞の変性が観察された。肝臓でのIL-4は、LECT2-KOマウスにおいて処理後1時間という極めて初期に発現量の倍増が見られた。血中サイトカイン量においてもTNF-α,IFN-γ,IL-6,IL-10では有意な差が見られなかったが、IL-4は処理後1時間で2倍の差が見られた。すでにIL-4がCon A肝炎発症に必須でありその産生細胞がNKT細胞であることが報告されていることから、フローサイトメトリーにより肝臓NKT細胞の割合を調べた。その結果、LECT2-KOマウスは野生型に比べて約2倍のNKT細胞を持つことがわかった。T細胞抗原受容体Vα14-Jα281の発現も増えていた。また、骨髄、脾臓のmononuclear cells画分ではNKT細胞の増加は観察されなかった。 以上のことから、Con A肝炎におけるLECT2-KOマウスでのIL-4の過剰産生は肝NKT細胞の増加が原因であり、それによりNKT細胞の過剰反応につながり肝障害が重篤化することが示唆された。また、このNKT細胞の増加が肝臓特異的であったことから、LECT2がNKT細胞の肝臓での恒常性維持の機能調節を抑制的に制御することが考えられた。
|